六


「……だから、なんでお前は……」
 真宮楓は、溜息をついて、それ以上の言葉を飲み込んだ。
 駄目だ。どうせ何を言っても、朝だけはかなわない。
 起き抜けからハイテンションな女と、どうしても朝が弱い自分とでは、もう最初から勝負がついている。
「何、何か言ったか?」
 すでに早足になっている獅堂藍は、自動ドアの手前で足を止めて振り返る。
「いいや、……もういいよ」
 マンションのエントランスを出て眩暈がした。一面の銀世界――冗談じゃない。寒いのだけは、昔から苦手なのに。
 靴が雪を踏みしめ、ぎゅっぎゅっと鳴っている。
「この音、いいよなぁ、子供の頃、長靴履いて雪の中歩くのが大好きだったんだ」
 道路の中ほどまで出た獅堂は、そう言って嬉しそうに足を踏み鳴らしている。
「……変わってないんだ、頭の中は」
 思わず出た皮肉も、聞こえてはいないようだった。
 朝の五時半である。
 信じられないことに、まだ五時半だというのに、たたき起こされ、散歩に無理矢理つき合わされているのである。
「楓、早く来いよ、新聞配達の人に、先越されるだろ」
「…………」
 越すか、莫迦。
 と、叫びたいのを堪え、楓は、しぶしぶと女の駆けて行った後を追う。
 ちらつく雪の中、マンションの傍を流れる河川敷は凍えるような寒さだった。手袋をしていても、指の先まで凍りついている。
 雪を抱いた枯れ枝は、春になると桃色の花弁をつける。今は灰色のそれが、河川敷をアーチのように覆っている。
 真っ白な道。まだ轍ひとつついていない。獅堂は、その白い道に、とことこ足跡をつけては歩いていた。
「はー、朝ってすがすがしいよな」
「…………」
 ま、いいか。
 と、溜息と共に、楓は不機嫌でいることを放棄した。
 実際――自分一人むっとしていることが、バカバカしくなってくる。この、能天気なまでに前向きな女といると。
 明け始めた蒼白い空。小雪の中で、獅堂が振り向いて笑っている。
 すらっと痩せた身体に、コートを羽織って――シルエットは、少し華奢な男の人といった感じだ。
 最近、髪を切る間がないのか、普段より少し長く伸びた髪。肌の色は、体質なのか、健康的な白桃色で、職業の割りには、さほど日焼けする風でもない。黒目勝ちの凛とした目に、形良い鼻と唇。一見して――気安そうに見えて、近寄り難いものを感じさせる女である。
 気取っているのとも、取り澄ましているのとも違う。何か――犯しがたいオーラのようなものに包まれている、そんな感じだ。
「なんだよ、……自分の顔、何かついてるか」
 その表情が、無防備に戸惑っている。鼻の先が少しだけ赤くなっていて、それがなんだか可愛かった。
「いや、別に」
 肩が並ぶと、どちらともなく手を出し合って、そのまま手を繋いでいた。
「こんな日にもフライトあるのか」
「……ない、多分、今日はブリーフィングだけで帰れると思う」
「ふうん」
 何気なく答えながら、少しほっとしている自分がいる。
 結婚したばかりの妻の職業はパイロットだ。しかも――航空自衛隊の、要撃戦闘機のパイロット。諦めてはいるものの、毎日が――心配じゃないといえば嘘になる。
 河川敷の半ばまで歩いて、獅堂がふと足を止める。
 少し赤くなった横顔が、じっと天を仰いでいる。
 睫に雪の結晶が落ちて、それが、まるで現実のものではないと思えるくらい、美しかった。
「……楓」
「なんだよ」
 その眼が、じっと自分を見上げている。
「お前、子供、欲しくないのか」
「………………は?」
 突拍子もない展開に、楓は呆けたように瞬きを繰り返した。
「な、なんだよ、朝からなんの冗談だ」
「だって、結婚したのに、いつまでもああいう」
「待て」
 それ以上言うな。
 その思いを込めて見下ろすと、女は不服そうに唇をとがらせた。
「……お前、結婚したからって、いきなり、それは……」
 全く、ひやひやする。いくら早朝とはいえ、そんなことをいきなり口にしてもらいたくはない。無防備というか鈍感というか……そういう意味では、全く困った相手なのだ。
「……別に……自分も、今すぐってのは、確かに少し困るけど」
 再び歩き出した女が、小さくそう呟いた。
「だったらいいじゃないか、俺だって、まだ父親にはなりたくねーよ」
「……だったら、いつかはちゃんと、父親になってくれるのか」
「…………」
「お前の場合、……なんか、別の意味で、子供作りたくないんじゃないかって思ってさ」
「痛そうで、それだけは代わりに出来ないから」
「……いや…………誰も、そんなことまでは」
 女が凍り付いている。楓は笑って、その手を少し強く握り締めた。
「何、焦ってんだよ、先は長いんだし、そんなこと今考えても仕方ないだろ」
「……そりゃ……そうだけどさ」
 獅堂は、わずかにうつむいた後、ふいに真剣な目になった。
「産もうな、子供」
「そんな、気合いれて言わなくても」
「約束だからな」
「…………」
「自分は、低レベルの放射能を浴びているし、強烈な電磁気の中で仕事をしている。ちゃんと子供が産めるかどうか、正直言って判らないけど」
「…………」
「でも、産もうな、残したいんだ、自分とお前の、生きてきた証みたいなものを」
 ふいに愛しさがこみあげて、楓は足をとめ、並ぶ女の肩を抱いて引き寄せていた。
「……こういうことができるから、朝の散歩っていいよな」
 少し照れたように女が呟く。
「ばーか」
 言葉を交わし、もう一度唇を重ね合わせる。
「約束……」
「いいよ、してやるから」
 何故か、胸の痛みを感じ、楓はそのまま、獅堂を抱き締めていた。
 多分――子供は。
 無理だろう。
 自分の遺伝子を受け継ぐこと。それが、生まれてくる子供にとって、あまりよくない未来に繋がると、漠然と理解しているから。
「……時々、自分は思うんだ、」
「何を」
 楓の腰にまわされた手に、少しだけ力がこもっている。
「……空に出る時も思う……今も思うよ、……この世界は、美しくて、……底なしに何かの、すごいエネルギーを持ってて……」
 まるで夢でも見ているような優しい声だった。
「……絶対に無理なことって、この世界にはないんじゃないかって思えるんだ……変わらないものでも、変えられる力が……」
「…………」
「……この世界には溢れている。自分は、そう思いたい」
 楓には何もいえなかった。今、そう言う獅堂の横顔が――彼女の持つ強さが、まさに、楓にとっては、不可能を可能にする全ての源のように思えたからだ。
「……楓?」
「いや、だったら帰ってすぐ作ろうかと思ってさ」
 誤魔化すように軽口を返す。
「……すぐはな、……今、少し仕事が忙しいから」
 苦く笑い、獅堂もまた、曖昧に視線を逸らした。その先には――楓には踏み込めない、国防の問題が絡んでいる。
 逸らした女の瞳が、わずかに翳る。
 その理由を、楓はなんとなく理解していた。最近――獅堂の帰りは極端に遅い。週に二日は戻らない。多分――彼女を憂鬱にさせている何かが、この世界で動き始めているのだろう。
「女の子なら楓に似て欲しいな、性格は……まぁ、自分で」
「ちょっとまて、それ、どういう意味だよ」
「まぁ、あれだ、あれこれ考えこむ性格にはなって欲しくないからさ」
「だからって、考え無しの能天気も困るだろうが」
 なんだかんだ言い合いながら、手を繋いで歩き続ける。
 空が、薄紙を剥がすように明けていく。
「……クリスマスさ。……嵐が、遊びに来たいって言ってんだけど」
「嵐が?」
「……うん、宇多田さんとか……そのへんの人と一緒に」
「…………」
 そのメンツに嫌な予感はしたものの、最近どこか様子のおかしい嵐と、会わなくてはいけないと思っていた矢先だった。
「ま、任せるよ。ただ、あんなのは二度と嫌だからな」
「あ、それはもう、多分」
「何が多分だよ」
 川の向こう岸、ビルの谷間に、薄明かりが指し始めている。
「そろそろ、戻ろうか」
 楓が呟くと、獅堂は少し寂しげな目になった。
 が、それは一瞬で、すぐに腕をからめてくる。
「今夜の晩御飯、何にする」
「するって、作るのは俺だろうが」
 閉口してそう言うと、獅堂はようやく、楽しそうな笑顔になった。
「何かあったかいものが食べたいな」


                 七


 缶コーヒーを投げると、ブランコに腰掛けていた男は、少し笑顔になって、それを見事にキャッチした。
「さすがに朝は冷えますねぇ」
「……てか、そろそろ退散しないか、ここ。世間は一応平日だろ」
「いいじゃないですか、男二人が公園でぶらぶらしてても」
 鷹宮は楽しそうにくっくっと笑う。
「間違いなく、性質の悪い酔っ払いだと思われるだろうな」
 閉口しながら、椎名は自分も鷹宮の隣のブランコに腰を下ろした。
 時刻は六時少し前。
 一体何をやってるんだと思うが、まぁ、なんとはなしに、ぶらぶらと公園に寄り、ベンチで雪景色を見つめるはめになっていた。
 さすがに話しも尽きて、黙りがちになっていたが、鷹宮が帰ろうと言い出すまでは、つきあってやるつもりだった。
「はは、警察に引っ張られたら、いい笑いものですねぇ。航空自衛隊のエリートパイロットが……」
「お前の方が困るんじゃないか、何しろ、自衛隊の特務機関だろ」
「多分、大目玉ですよ、いっそ、クビにならないかな」
 ふざけたようにそう言い、鷹宮は缶のプルタブを切った。
「……飛行機、いいんですか」
 その声が、少し真面目になっている。
「多分、欠航だよ、いいさ、たまにはこんなことがあっても」
「やさしいなぁ、椎名さんは」
 缶に唇をつける、その横顔が、初めて儚く見えていた。
「鷹宮」
「はい?」
「……いい加減、親父さんのこと、許してやれよ」
「…………」
「というより、もう……」
 お前自身を許してやれよ。
 その言葉は、言えなかった。
 鷹宮の背負うものが―― 一言で慰められるような、軽いものではないと知っているからだ。
「真宮楓君は、殺しても飽き足らない恋敵ですが」
 わずかな沈黙の後、普段通りの穏やかな――鷹宮の声が返ってきた。
「ひとつだけ、僕は彼に共感しているんです。許されない罪もある、終わらない過去がある。彼はそれを知っている……」
「…………」
「願わくば、獅堂さんが、その強さで彼を救ってくれればいいと思います……それだけは、本当にね」
 お前はどうなんだ。
 その言葉を、椎名は苦い思いで飲み込んだ。
 じゃあ、お前はどうなるんだ、誰がお前を――その、闇のような過去の檻から救ってくれるんだ、鷹宮。
「行きましょうか、今ならまだ、予定の飛行機に間に合いますよ」
 鷹宮がそう言って立ち上がる。
 昨夜の乱れなど微塵も残っていない、端正で怜悧な笑みを浮かべて。
「……大丈夫か、」
「今日の予定なら、キャンセルしますよ。さすがに眠くて身体が持ちそうもないので」
「そうか」
 大丈夫なんだな。
 普段通りの横顔を見て、椎名はわずかに安堵した。
「そういや、お前、俺に謝りたいことがあるって言ってたが」
 公園を出て、タクシーを求めて歩きながら、ふと思い出して聞いてみた。少し遅れて歩いていた男は、あっと言うような声を上げる。
「ああ……そうですね、あれですよ、まぁ、なんていうか」
 ふざけているのか困っているのか、判断に迷う口調である。
「いくら鈍いあの人でも、ああいう言い方をすれば、相手が自分だと気付くかなぁ、と、ま、それは思いっきり杞憂だったわけですが」
「…………なんの話しだよ」
「まぁ、つまりですね、僕には……かつて、苦しいほど好きな人を抱いた経験があり、その相手が」
「……?」
 ちらほらと車が流れる車道脇に立つと、丁度信号が青になり、向かってくるタクシーが眼についた。椎名は手を上げようと身を乗り出す。
「で、咄嗟に出した名前がですねぇ、まぁ、咄嗟というか、あの時は純粋に、獅堂さんの反応が楽しかったんですが」
「なんだよ、判り難いな、はっきり言えよ」
 その次に鷹宮から出た言葉を聞いて、椎名は全身の血が引くのをはっきりと感じた。
「ば、ば、ば、ば」
 静かな早朝。莫迦野郎という男の怒声に驚いたように、一旦スピードを緩めたタクシーが再び加速して通り過ぎる。
 後は――鷹宮の楽しそうな笑いだけが響いていた。


                 八


「あっ」
 何やってんだよ。
 と、少し苛立った声がエレベータホールから響いている。
「悪い、スニーカーの紐が……」
 獅堂は慌てて、そう声を返した。
 いつまでも古いものを無理に履いていたせいだろうか、さほど力を入れたわけでもないのに、いきなりぷっつりと切れてしまった。
 マンションの部屋の玄関。
 珍しく午後から休みのとれた獅堂と、それに合わせてわざわざ休みを取った楓。二人で、明後日に迫ったクリスマスイブの買出しに出かけるところだった。
「先に降りるよ、管理人に回覧板返さなきゃいけねーし」
 開け放たれた玄関の扉の向こうから、戻って来た楓が呆れたような顔を覗かせて言う。
「ごめん、すぐに追いつくから」
 さすがに、わずかな罪悪感を感じないでもなかった。
 やっかいなことに、楓は今月、マンションの当番……とやらに当たっているらしい。こういう場合、回覧板をまわしたり、会費を集めたり……少しは手伝わないといけないのだろうが。
 が、自分がするよ、と言ったところ、
「いいよ、ルーズな住人って思われたら困るから」
 と、普通に拒否されてしまったのである。それ、どういう意味なんだ?と、多少はむっとしたものの、休みも不定期で殆んど深夜まで帰らない自分に、楓の代役が務まるはずもなかった。
 靴を履き替え、慌てて玄関を飛び出して――思い出したように鍵を掛ける。どうも、高級マンションは住みづらい。前のアパートなら、ちょっとした買い物程度では鍵を掛けないことも多かった。それは――後で楓にものすごく怒られたのだが。
 エレベータに乗り込むと、先客が二人いた。上の階の住人たち――よくゴミ捨て場で顔を合わす中年の婦人が二人、愛想よく会釈してくれる。
「こ、こんにちは」
「いいお天気ねぇ、この間の大雪が嘘みたいね」
「は、はぁ」
「こないだ、ダンナさん、ゴミ捨ててらしたわねぇ」
「おはようございますって、私少しドキドキしちゃった」
「かっこいいダンナさんで、うらやましいわぁ、うちの主人と取り替えて欲しいくらい」
 なんと答えていいか判らず、とりあえず愛想笑いで誤魔化した。
 少し気を許すと、根掘り葉掘り聞かれそうで恐い。どうも、こういう奥様同士の会話は苦手だ。つまるところ、彼女と獅堂には共通点がまるでなくて――多分、楓なら、器用に話をあわせられるのだろうが。
 楓は……必要以上に、マンションの住民関係に気を配っている。それは、少し気の毒に思えるくらいに、だ。
 エレベータを降りながら、獅堂はふと不安に思う。
 楓は――まるで、張り詰めた糸のようだ。いつも、何かと闘っている。自分といても、一時その糸を緩めても、外に出れば、すぐにぎりぎりまで張り詰める。
 そんな生き方は窮屈ではないだろうか。いつか――その糸は、脆く切れてしまうのではないだろうか。まるで、唐突に切れた靴紐のように。
 エントランスの向こう、管理人室に、すでに楓の姿はなかった。
 マンションの階段を降りる。地下駐車場に回ろうとした途端、敷地内の小さな噴水の前に、楓と――背の高い男が立っているのが見えた。
―――嵐……?
 楓は、獅堂に背を向けている。
 獅堂がその方を見ると、楓と向き合っていた男が、つられるように顔を上げた。
 楓より――頭ひとつ身長が高い。髪の感じが似ているから、一瞬、嵐だと思ったが、骨ばった顔つきと、詰め襟のような黒っぽい服は、明らかに嵐とは違う。
 男は獅堂を見てにっこりと笑うと、愛想よく片手を上げ、二三言、楓に何か言った。
 一目で、日本人ではない雰囲気を持った男だった。闇のような黒髪と黒い瞳。頬骨の浮き出た顔に、大柄な身体。東洋人――中国か、韓国の人だろうか。
 次の瞬間、獅堂の脳裏によぎったのは、国際指名手配を受けている男のことだった。
 中国共和党の科学者を率いた。カリスマベクター。先の戦争の、実質首謀者と目されている男。
「待てっ」
 ただ、手配されている特長とは大きく違う。そもそも男は、中国籍をもっていても、肌の色や目などは欧米人のそれだと聞いていたが――。
「藍?」
 獅堂が門の外に走り出ると、すでに――男の姿は何処にもなく、ただ、通り過ぎた車のエンジン音だけが残っていた。
「なんだよ、何やってんだ、お前」
 すぐに背後から、楓が呆れたように駆け寄ってくる。
 獅堂は、眉をひそめたまま、その楓に向き直った。
「今の奴、なんだ、お前と何を話してた」
「……何って、普通に道聞かれただけだけど」
「…………は」
「韓国の人で、こっちの親戚を尋ねてきたんだってさ、なんだよ、怖い顔して」
「……知らない人だな」
「知るわけねーだろ、道聞かれただけなのに」
 楓は、本気で呆れているようだった。
 獅堂は少しほっとして、肩の力を抜く。考えすぎだ――そうだ、楓はもう、大丈夫なんだ。
「それより行こう、時間なくなるだろ」
 時計を見た楓は、さっさと肩をそびやかす。
「今日は自分が運転するから」
 気を取り直し、獅堂はその後を追った。
「ふぅん、お前はよほど、俺の運転が気に入らないんだな」
「そ、そんなことないよ、ほら、他のことはやってもらってるし、せめて運転くらいはさ」
「ま、いいけどさ」
 地下駐車場。車の傍で足を止めた楓は、上着のポケットに手を突っ込む。
 その途端、ふと彼の顔色が変わった。顔色、というより、何か――意外なものにぶつかったような、不思議な表情をふと浮かべた。
「……楓?」
「ああ、鍵ね、ほら」
 けれど、その変化はごくわずかで、楓はすぐにいつもどおりの表情になって、ポケットから鍵を取り出して放り投げる。
 それを受け取って――わずかな気がかりを感じたものの、獅堂は運転席に収まった。
「今日は、外で何か食べるか、たまには外食も悪くないよな」
 助手席で――普段通りにそう言う楓に、全く憂いがなかったからだ。
―――気のせいだな。
 自分らしくもない、妙に神経質になっている。獅堂は苦笑して車のエンジンにキーを差し込んだ。
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