十七


「答弁書は、全て記憶してあるんだろうね」
 背後に座る所長の言葉に、楓は無言で頷いた。
 国立海洋学研究所の二階に設けられた、臨時の記者会見場。
 用意された記者席には、すでに十数社の民放、国営放送のテレビクルーが詰め掛けている。
 楓は壇上で――二名の職員に左右をかためられた状態のまま、用意された席についていた。
 楓の背後にもう一台テーブルが用意されており、そこに、この研究所の幹部連中が座を占めている。彼らは、いわば、楓とマスコミの監視役のような存在だった。
「いいか、くれぐれも感情にかられて余計なことを言わないように。防衛庁からも公安からも、事前に答弁のチェック要請が来ているくらいだ。君の発言いかんによっては、ここで仕事をしてもらうことができなくなるぞ」
 還暦過ぎの白鶴のような所長は、文部省からの天下り官僚である。そのせいか、縦の命令には絶対服従の、四角四面、融通の利かない性格をしている。
 決して悪人ではない、楓のことを、今までなにかれとなく気遣ってくれている。ただし、それは主に自らの保身のためだと――楓は知っている。
 が、それを差し引いても男は善人には違いなかった。
「…………」
 楓は、かすかに溜息をついた。
 今日の記者会見の質問は、事前に全て決められていた。
 それ以外の質問――獅堂藍との醜聞に関する質問以外は、一切受け付けない段取りになっている。そのせいか、居並ぶ記者の顔にも覇気がなく、どこか不平そうに見える。
 彼らが聞きたいのは、あの戦争で楓が果たした役割であり、あの審判の日の出来事なのだ。
 額に指を当てながら、どこかすっきりしない気持ちのまま――手元の資料に目を落とした。何かが胸の底に引っかかっている、でも――何だろう。それがどうしても思い出せない。
 今朝別れたばかりの女ことだ、それだけは間違いない。
「楓君」
 ぽん、と肩を叩かれた。
 少し驚いて顔を上げる。立っていたのは宇多田天音だった。
「……緊張してるわね、顔がいつもよりかっこよく見えるから」
 肩に記者のパスをつけた女は、平素と変わらない明るさでウインクする。
「こらっ、君、勝手に壇上にあがっては困る」
 背後の職員の困惑気味な声、宇多田はそれを無視して、楓の横にしゃがみこんだ。
「そのスーツ、正解ね。あなたの顔は主婦受けするんだから、それを最大限に生かさなきゃ」
「なんだよ、それ」
「イケメンの利点を生かしなさいって言ってるの。外見ってね、楓君、あなたが思っている以上に大切なものなのよ」
「じゃあ、せいぜい笑ってるよ」
 苦笑が漏れる。自分をリラックスさせようとしてくれているのか――その心遣いには素直に感謝したかった。
「そろそろ時間だ、戻りなさい、君」
 背後から聞こえる所長の声。
「まだ、記者は揃ってないようだが、始めてしまおう、こんなことはさっさと」
 ざわっと、波紋のようなどよめきが起こったのはその時だった。
 記者席の中心が割れている。
 カメラがひしめくその中で、凛とした白いユリの花が咲いている。
 そんな錯覚さえ、一瞬楓は覚えていた。
―――は……?
 静まりかえった室内に、靴音だけが響いている。
「……ふざけんな、オイ……」
 唖然としたまま、楓はそれだけを呟いた。
 記者席の中を縫うようにして、こちらに歩み寄ってくる、自衛隊の制服を着た女。
 オフホワイトの士官服に、モスグリーンのタイ、そして白手袋に帽子を被った――どう見ても男にしか見えない女。
「おい、あれ、獅堂藍じゃないのか」
「すげぇ、実物はでかいな」
「いいのかよ、あの子には取材規制がかかったはずだろ」
 囁きと共に、一斉にたたかれるフラッシュ。
 それを、ものともせずに、獅堂はまっすぐに壇上に歩み寄ってくる。
 すっかり主役と化した女は、壇上に立つと帽子を取り、丁寧な所作で敬礼した。
 ものすごく――かっこよかった。
 楓は――まだ今の事態が上手く飲み込めないまま、記者会見のために設けられた席から――女の背中を見つめていた。
 女のかっこよさではない。すでに男と化したかっこよさだ。
「えーと、……自分は、獅堂と言います」
 が、口を開くとどこか頼りない声になる。
 激しいフラッシュに戸惑っているのか、その視線が泳いでいるのがよく判る。
―――あの、莫迦!
 ようやく我にかえった楓は立ち上がろうとした。その腕を、ぐっと強く掴まれる。
 振り返ると、少し下の目線、しゃがみこんだままの宇多田が、楓の腕を握り締めていた。
「天音……」
 傍らの職員も唖然としている。宇多田は、おそれを知らぬ目で、周囲を一瞥し、そのまま楓の腕を掴み続けた。
「今、下手なことは言わないで」
 怖いくらい真剣な目をして女は囁く。
「あなたにとってはね、世論の反応が全てなの。世論があなたの味方につけば、こんな騒ぎは二度と起きない、でも、世論を敵に回せば、あなたはもう、日本でまともに生きていけない」
「そんなことはどうでもいい、今は」
「莫迦ね、それはあなただけの問題じゃない、もう獅堂さんも嵐君も、無関係ではいられないのよ!」
「…………」
「獅堂さんが何を言い出すか知らないけど、あなたまでそれに巻き込まれてはダメ、もっと空気を読んでから行動を決めなさい」
 さすがに反発して立ち上がろうとした。獅堂の声が――突きつけられたマイクを通じて、響き渡ったのはその時だった。
「ここにいる……真宮楓さんと自分は、半年前から真剣に交際しています。そのことについて、特に隠そうとか、逃げようとか、そんな気持ちはありません」
 場内が一瞬静まり返る。
「真宮さんのプライベートに係わることについては、申し訳ないですが、お答えするのは控えさせてください。それから、彼自身への質問も、できればご遠慮願えますか。自分は公僕ですが、彼は普通の民間人ですので。自分のことでしたら、なんでも」
 冗談だろ……。
 楓は茫然と――その声を聞いていた。
 何を、――――何を言ってんだ、獅堂さん。
 そして、ようやく思い出していた。
 そうだ、あの顔だ。
(……わかった)
 今朝、朝食のテーブルでそう言って曖昧に笑んだ女の顔。
 あの笑い方を見たのは、今日が初めてではなかったのだ。ドイツで――ノイシュヴァンシュタイン城を一人で見に行けと言った時がそうだった。あの女は「わかった」と笑い、そしてすぐに引き返して来たのではなかったか。
 今朝も、獅堂はあの時と同じ表情で笑っていた。きっとあの瞬間から、この場に出る決意を固めていたに違いない。
 俺としたことが――。
 不信に思いながらも、スルーした。そのことを悔いてももう遅い。すでに獅堂は、フラッシュの真っ只中に立たされている。
「あの記事のことですが、どう思われましたか」
 その獅堂に、たちまち矢継ぎ早の質問が飛び交い始める。場内は騒然としかけていた。
「えっ、えーっと……そうですね、まぁ、……そんなにもてたら、幸せだろうと」
―――………………莫迦かこいつは。
「研修生時代にですね、そういった事件に巻き込まれたというのは」
「ああ、……っと、そういったことは、ないです。ハイ。あれば、まぁ、さすがに隊には残れないでしょうし、ははは」
 笑うとこじゃねーだろ、オイ!
―――軍人だったら、もっとしゃきっと答えりゃいいだろう。
 なんだって、そんなにしどろもどろな。
「写真は、内部から出たものだということですが」
「…………それは、自分が確認することではありませんので、それに、隊の中には、そんな真似をする者はいないと断言できます」
 はじめて獅堂の声が、真剣な色味を帯びた。
「真宮さんに、国家機密を漏らしているという疑惑については」
「……公務員には、守秘義務というものがありまして」
 随分失礼な質問だが、獅堂の口調に、それに対する憤りのようなものは何もなかった。
「仮にそれが親であろうと、真宮さん以外の誰であろうと、その義務違反を犯したことはありませんし、この先もありえないです」
「真剣なお付き合い、と言われましたが」
 少し意地悪い声がした。
「新命種と在来種の結婚は、いまだに禁止されていますよね、それについては、どうお考えに?」
「ああ、結婚はします」
 獅堂は、あっさりと、――――本当にあっさりとそう言った。
「あらま」
 隣にしゃがみこんでいた宇多田が呟く。
「――――――は……?」
 楓は、顎が落ちていた。
 ちょっとまて、今、この女はなんと言った?
 立ち上がろうとした手を、隣の宇多田が強く掴んで引き止める。
 獅堂は――マイクに向かっている女は、それまでも楓を一度も振り返らなかった。
 そして、今も、振り返らないままで、淡々と続ける。淡々と――それでいて、力強い口調で。
「法律婚は無理でしょうが、内縁婚という形で、いずれ、きちんとした形で一緒に生活していくつもりです。ですから、こういった……なんていいますか、こういったことは、これで最後にしていただけるとありがたいです。彼は一般人で、自分も、……まぁ、普通の軍人です。特に変わったことをしているわけじゃ、ありませんので」
 少し慌てた様子で、制服姿の警備員が駆け込んできたのはその時だった。
「すいません、獅堂三佐への質問は、ここで打ち切らせてもらいます、彼女は公務がありますので」
「……防衛庁からストップがかかったのね」
 騒然とする騒ぎの中、宇多田が耳元で囁いた。
「獅堂さんへの取材は控えるよう、今朝、マスコミ各社に防衛庁から伝達があったのよ。彼女、完璧に上のおえらいさんの意向を無視しちゃったわけだ」
「…………莫迦な」
 それが何を意味しているのか。
 楓は、目の前の光景が、暗く沈んでいくのを感じた。
―――何を考えてるんだ、あの人は!
「獅堂さん!!」
 宇多田の腕を振り解き、楓はさすがに立ち上がっていた。
 フラッシュと喧噪で眼が眩む。
「真宮君、君は、予定以外のことで口を開いてはダメだ」
 背後で、所長が厳しく囁く。
「後見である私の立場を考えたまえ、君の言動は、常に公安に監視されているんだぞ」
「…………」
 唇を噛み、楓は苦痛に歪んだ顔を上げた。
 目の前で――こちらを一顧だにしない獅堂が、二名の警備員に守られるようにして退室していく。
「すいません、最後に」
 女性記者がマイクを片手に追いすがった。
 獅堂が足を止める。警備員が手を振って女性記者を牽制する。
「真宮さんの――どこに惹かれたんですか?」
 わずかな沈黙、その虚を突いたような質問に、一瞬場内も静かになっていた。
「八重歯です」
 返ってきた獅堂の声。
―――は?
 と、張り詰めた緊張が一気に解けたのは、多分楓だけではない。
「あいつ、笑うと可愛いんです、八重歯」
 どっと笑いが場内を包んだ。
 緊迫したムードで始まった記者会見は、間の抜けた受け答えのせいか、ひどく和やかなそれに転じてしまっていた。
「お幸せに、獅堂さん」
「応援してますよ」
 そんな声さえ飛び交っている。
「上手いわね、彼女」
 楽しげに笑っていた宇多田が、退室していく獅堂の背中を見ながらそう言った。
「得な性格ね、それとも意図的なのかしら。なんにしても、好感度アップよ、今大切なのはそれ」
 にわかに自分にフラッシュが向けられる。
 楓は戸惑って眼をすがめた。
「獅堂さんの努力を、あなたがぶち壊しにしてはだめ。嘘も方便、せいぜい神妙に彼女の話に口を合わせておくのね」


                   十八


「……はぁー、すげぇなぁ、軍の人で、ベクターと結婚するって、結構勇気いりますよねぇ」
 滝沢豹のその声を、テレビ画面に釘付けになっていた嵐は、夢のような虚ろな気持ちで聞いていた。
 東京大学内にある喫茶店。
 遅くなった昼食をとるために、たまたま大学に来ていた滝沢と、行きつけの喫茶店に入った直後だった。
 楓が映っている。
 二年ぶりに見る――写真ではない、楓がそこにいる。
 やせた顎、肉の落ちた頬。鋭さだけが際立つ、美しい相貌。
 居心地の悪そうな顔で、でも――精一杯、真摯な口調で受け答えをしている。
 叩かれるフラッシュに、時折眼をすがめている。苦しそうだ、嵐は思った。
 多分、今、楓は、ひどく苦しんでいる。身を切るような辛さが、画面に映る横顔から、眼差しから、ひしひしと伝わってくる。
「ご自分の過去について、どう思われますか」
 意地の悪い質問が飛ぶ。
「ご遺族の方に、なにかあればどうぞ」
 予定外の質問だったのか、楓の両サイドに座っていた男たちが、何か言っている。
 楓は、それを制して立ち上がった。
「僕がこうしてテレビに映る事で」
 掠れた声。緊張に蒼ざめた額。大丈夫だろうか、嵐は拳を握り締めた。
 また――あの発作がおきはしないだろうか。
 桜庭基地で、僕が彼を追い詰めてしまった時と同じような。
「……多くの方が、不愉快な思いをされると思います。それを、心から申し訳なく思っています」
「収入のことや、マンションのことですが」
「それは、事前に文書で回答した通りです」
 楓ではなく、隣に座る男が即座に回答する。
「今回の騒動で、獅堂さんは、軍の出世コースから外れるという見方もありますが」
 楓の顔が、冷たく強張る。
「ただ……申し訳ないと思っています。彼女を、こんな騒ぎに巻き込んだ原因は、全て僕にあると、それだけを理解していただきたい……」
 これ以上、見続けることはできなかった。
―――楓。
 嵐は、苦衷で胸が詰まりそうだった。
 獅堂が発言した言葉よりも、なによりも、今テレビ画面でフラッシュを浴びながら、深く低頭している楓の姿が痛すぎた。


                    十九


 リモコンで画面を消すと、対面のソファに座っていた男は、けげんそうに眉を上げた。
「……最後まで、ご覧になりませんか」
 座っていても背筋をすっきりと伸ばしている、礼儀正しいジャパニーズポリス。
「お話の途中です。ミスター遥泉、あなたの話を先に済ませてしまいましょう」
 レオナルド・ガウディは、微かに微笑してそう言った。
「NAVIに、身柄保証を依頼されたのは――この女性ですか、右京奏。知っていますよ、元プレジデントのお嬢様」
 ひゅっと口笛を吹き、レオはその写真をテーブルの上に置いた。
―――美人だ。
 戦争中は、よくお目にかかった顔。どことなく、楓に雰囲気が似ている女。
「で、説明していただきましょうか、ミスター遥泉。彼女は認定されたベクターでもなんでもない。一年前に退官された警察官で、日本の法律においては、ベクターではなり得ない職業についていた女性だ」
「よく、ご存知で」
 男は――日本の警視庁、捜査一課長を務めているという、やせぎすの能面のような眼をした男は、そう言って指先で眼鏡を押しあげた。
 きれいな男だ、レオは軽く肩を上げ、そして愛想よく両手を膝の上で組みなおした。
「ご存知のように、我々NAVIはベクター……今では、新生種などという言い方をしますがね。まぁ、ベクターの人権が侵害されれば、どのような手段を使ってでも、その侵害を取り除きます。しかし、ミセス奏は、ベクターではない」
「認定されてはいません」
 遥泉という男は、ここへ通されてから一度も変わらない表情のままそう言った。
「けれど、彼女は紛れもなくベクターです。そして今、その身柄を二年余に渡ってペンタゴンに拘束されている」
「……ほう」
 レオはわずかに眉根を寄せた。
 ペンタゴン――米国防総省。
 そこから連想されるある一つの事実が、ふと、胸の底をよぎる。
 遥泉という男は続けた。
「彼女は、一年前、米国で結婚しています。結婚相手の名前は、アンディ・水城。日系三世のアメリカ人で、第一期ベクターだ」
「……知っていますよ」
 NAVIという組織に反発し、政府に追従するベクターのことなら、レオは全て記憶している。
「現在、右京さんの代理人として、彼女の意思の全てを代弁しているのがその男だ。日本政府の帰国要請は、彼の名において――終局的には、右京奏自身の名において、全て拒否されている」
「…………」
「僕は、」
 遥泉の胸元の――携帯電話が鳴ったのがその時だった。
「失礼します」
 席を立ち、携帯電話を耳に当てる男。
 その背を見ながら、レオは苦い吐息を漏らした。
 嫌な予感がした。上手くはいえないが、この第六感めいた予感が外れたことは、今まで一度もない。JAPANから来た男の話は、間違いなくやっかいで――なおかつ、不愉快なものになるだろう。そんな気がする。
 頭の中には、先ほど観たテレビ画面。深々と低頭していた、想い人の姿がまだ焼きついていた。
 遥泉は、話が長くなりそうなのか、携帯を持ったまま、扉の向こうに消えてしまった。
 所在無くテレビの電源を再びいれる。
 日本人向けの専用チャンネル。画面では、若い男性タレントが、女性タレント相手に莫迦騒ぎをしている場面だった。
「……莫迦な国民だ」
 この厚顔無恥な若者と、戦時中、ずっと神経をすり減らして最前線に立たされていた楓と―― 一体、どちらの罪が重いというのだろうか。
「本当の戦犯は、カスミガセキで、優雅に左団扇だっていうのにな」
 残酷な生贄山羊。
 日本においての台湾有事とは、唯一民間人に被害が出た民間旅客機誤爆事件を言うのであり、その全ての責任は、真宮楓にある。そういう短絡的な構図が完全に敷かれているらしい。
 政府主導の情報操作。
 そして、今、かつて誰よりもプライドが高かった男は、その政府に首輪をつけられ、犬のように飼いならされようとしている。
「…………楓、どうして、もっと楽な生き方を選ばない」
 画面をリモコンで消しながら、レオナルド・ガウディは、指を唇に当てて呟いた。
「今の君は、まるで壊れる前の人形のようだ…………」


                   二十


「パカな女だ」
 一言言い捨て、執務室を後にした男。
 一人残された鷹宮篤志は、無言で手元のファイルを開いた。
 昨夜、ぎりぎりになって決定したオデッセイ・セカンドの新クルーの選定書。
 最後の最後に、議論の末に候補にあがった、百里基地のエースパイロット。
「……あなたらしい選択ですね」
 苦い思いと共に、鷹宮はその名前をラインで消した。
 おそらく、処分はこれだけでは済まない。階級は減になるだろうし、パイロットの資格を剥奪される可能性もある。
 獅堂藍は――防衛庁のトップから降りてきた命令に違反したのだ。
 それは、明確な軍規違反だった。自衛隊組織の一員として、許されない行為だった。
「天使、降臨か……」
 鷹宮は低く呟いた。
 何年も前のあの日。背を向けて駆けていった少女。
 その背中に見えた透明な翼。
 その翼は、もう――。
「…………」
 鷹宮は眼をすがめた。そして、黙ったまま、ぬけるような青空に視線を転じた。
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天使降臨