オルドの自室に戻ると、ジュールがすぐに尋ねてきてくれた。
 室内に入ってきた彼の背後に立つ影を見て、あさとは内心、心臓が止まりそうになっていた。
     カヤノ、だ。
 カタリナ修道院の    千賀屋ディアスの娘。
 病んだラッセルの傍に付き添い、あさとを    「クシュリナ」を悪し様に罵った女。
 元、フラウオルドの第一女官。ダーラの代わりにやってきた女。
 ほっそりとした小柄で、色白の肌。寂しい顔だちだが、眼だけが大きい。ガラス玉のように無機質な瞳はどこか怖い印象がある。
 白い巻きつけ型のシンプルなドレスを着、緋色の髪は頭の上に巻きとめている。
「……すでにご存知でしょうが、この娘はカヤノです」
 ジュールはカヤノを振り返る。彼女は無表情のままで一礼した。
「先日、地理に詳しい者を、と申しました。このカヤノは、シュミラクールの地理、歴史に関してなら、書物がいらぬほど暗記しております」
「そう……なんだ」
 あさとはカヤノの眼を見て、無理に浮かべた微笑を消した。
 自分を見る女の眼に、かつて感じたほどの強い敵意は感じられない。けれど、そのふてぶてしい、見るからに不機嫌そうな眼差しは    彼女が嫌々この場に引き出されてきたことを、何よりも雄弁に語っている。
 ジュールは、一瞬背後の女を見遣ったものの、それでも無表情のままで続けた。
「先ほどディアス様にも、了解を得てまいりました。ディアス様におかれましては、しばらく皇都を留守にされるゆえ、その間、カヤノを女皇付きの女官として、お傍に置いていただきとう存じます」
「……ディアス様は、どちらへ?」
 あさとは、さすがに驚いて聞き返していた。
「諸国を旅されるようでございます。つい先ほどお発ちになられて、お帰りはいつになるか」
「そう……」
 今日のうちに会いに行くべきだったのだ。思わず唇を噛みしめる。
 何故だろう    ディアスに会うことが、とても    とても重要なことに思える。
 彼が聞くという「声」の正体。それがどうしても「雅」の声と重なってしまう。
「カヤノです。お久しぶりでございます」
 女の素っ気無い挨拶の声に、あさとはようやく現実に立ち戻った。
 あさとはカヤノのガラス玉のような眼を見つめた。……本当に、信頼できるのだろうか。
 以前カヤノがフラウオルドにいた頃、まだ彼女がジュールらの仲間だと知る前は、もしや、ヴェルツの内通者かと疑ったこともあった。
 ジュールが勧めるのなら、無論間違いはないだろうが、今でもあさとは、ひとつだけ、ジュールに問い質せない疑念を抱えている。
 それがユーリの、そしてグレシャム公の死の真相である。
 カヤノという女は、あさとの予感が正しければ、その両方に絡む事情を知っているような気がした。
「……では、よろしくお願いするわ、カヤノ」
 逡巡した上、ようやくあさとは立ちあがり、笑顔で手を差し出した。不安は残る、でも    これは、いい機会なのかもしれない。どれほど信頼を覚えても、あさととジュールは男と女だ。立場上、どうしても越えられない壁のようなものがある。この先何があっても、ジュールの口からユーリやグレシャムの真相を聞くことはできないだろう。
 あさとの手を握り、カヤノもまた、わずかに口元に微笑を浮かべた。掴みどころのない微笑みだったが、あさとは何故だか安堵した。
 そうだ。それに、この人はディアスの娘だ。きっと<声>のことも知っているし、ラッセルのこともよく知っている。そして    多分、アシュラルのことも。
「最初に一言言っておくけど」
 が、ジュールが出ていった後、カヤノは一転して冷たい眼であさとを見上げた。
「私、あなたが好きじゃないから」
「………」
「お姫様の暇潰しに付き合うつもりなんて最初からないから。それが、愚にもつかない道楽なら、私は絶対に協力しないから。そのつもりでいてよね」
 いきなり、ずけずけと言われ、あさともさすがに、むっとした。
 ジュールがいなくなった途端にこんな台詞を吐くなんて、これでは先が思いやられる。
「別に好かれてるとは思ってなかったけど。じゃあ、なんで金波宮に来たの?」
「ジュールに頼まれたからよ。仕事のこともそうだけど、あなたを守って欲しいって」
 挑戦的な眼。顔立ちは寂しいのに、凛と輝く眼だけがひどく印象的だ。
「守る?」
「そうよ」
 カヤノは自信満々に胸を張る。
     この娘が? 体格で言えば、そうとう華奢な部類なのに。昔のあさとであれば、逆に守ってやりたいような女だ。
 カヤノは両手を腰に当て、見上げるようにあさとを見つめた。
「理解に苦しむわ、ジュールもアシュラルも、あなたの心配ばかりしてるんだもの。あなたなんて、どこがいいのかさっぱりわかんない。まぁ、サランナよりはマシだから、とりあえず守ってあげるけど」
 以前、フラウオルドで第一女官を務めていた頃とは別人だ。すでに敵意を表明しているせいか、本当にずけずけとものを言う。
「守るって、あなた、私より小さいじゃない」
 あさとは少し可笑しくなった。身長も、あさとの方が遥かに高い。
「馬鹿ね、私が使うのはここよ」
 カヤノはそう言って、自分の頭を指先でつついた。
「自分で言うのもなんだけど、私は使えるわよ。せいぜい重宝してちょうだい。    で、あなたのこと、なんてお呼びしましょうか、女皇陛下様」
「クシュリナでいいわよ」
 今後、自分の身近に置く者とは、なるべく対等に話をしたいと思っていた。そういう意味では、カヤノはうってつけかもしれない。
 悪し様に言い募る口調にも、そこまで嫌味なものは感じられない。陰口を言われるいやらしさよりはずっとマシで、むしろ、真正直な印象さえ残る。
 それから、ふと、気にかかっていたことを聞いてみた。
「……サランナよりマシって、どういう意味?」
 元フラウマーラだったカヤノは、当然サランナと面識があるのだろうが、敵意を持つ理由までは判らない。ジュールも言っていたではないか、周囲の者は、皆、サランナとアシュラルの結婚を勧めたと……。
「言葉どおりの意味よ」
 カヤノは吐き棄てるような口調になった。
「サランナはしたたかで恐ろしい女よ。いつか必ず、アシュラルを大変な目に合わせるような気がするわ。私はあの女が大嫌いなのよ」
「大変な目……?」
 意味が判らず、あさとがそう聞くと、小柄な女は、きっと睨みつけるような眼差しになった。
「あなた、それでもアシュラルの妻? 本当にちゃんと彼のこと見てあげてるの?」
 あさとは何も言えずに、口ごもる。
「本当に腹の立つ人ね。いい? 私はあなたが嫌いだけど、サランナはもっと嫌いなの。アシュラルから、あの性質の悪い女を引き離すために、あなたに協力してあげようって言ってるのよ」
「な、何よ、協力って」
 カヤノの剣幕に、ついていけない。
「ああ、もう苛々する人ね。あなた、自分の亭主が妹と寝てて、何とも思わないの?」
「………」
     なんてことを言うんだろう。こんな、……こんなにはっきり言わなくても。
 あさとは赤面して立ちあがっていた。
 何とも思ってない、と言おうとして止めた。カヤノがますます怒りそうな気がしたからだ。
 しかし、意外にもカヤノは少し寂しそうな顔になった。
「……私は嫌よ。大好きなアシュラルが、あんな女にいいようにされているかと思ったら、我慢できない。本当はあなたにも、彼を渡したくないけれど……まだ、あなたの方がマシだから、我慢してるのよ」
「………」
     この人は……。
「あなた……ラッセルこと、好きなんじゃなかったの?」
 思わずあさとは訊いていた。
 カヤノはうつむいたまま、眉を寄せた。
「……好きよ。苦しいくらい、……子供の頃からラッセルだけが好きだったわ。でも、ラッセルにとっては」
 言葉を切り、カヤノは軽い溜息をついた。
「私は、いつになっても小さな妹に過ぎないのよ。私は孤児で、ラッセルとは本当の兄妹のように育てられたわ。今さら、その運命を怨んでも仕方がないけど」
 あっと、あさとは、目から何かが落ちたような思いで目の前の女を見つめている。
 そうか、ラッセルが自分には妹がいると言った……それは、それはカヤノのことだったのだ。
 カヤノは顔を上げる。そして、再び、きつい眼差しであさとを見据えた。
「でも、いなくなった人のことを、いつまでも引きずるほど愚かじゃないわ」
「………」
「あなたのためにラッセルが死んだ。それは今でも許せないけど、あなたがラッセルの希望そのものだったってこと、……私はよく知っていたから」
「………」
 見据えられ、あさとは苦しさからうつむいた。胸が詰まって何も言えない。
 苦しさと切なさ、この感情をどう表現したらいいのだろうか。カヤノの顔がまともに見られない。
「だからクシュリナ、あなたにはラッセルの遺志を受け継ぐ義務があるのよ。お願いだから、もっとアシュラルのことをちゃんと見て、彼を助けてあげて。私も予言書のことは知ってるわ、彼の運命の人があなたなら……悔しいけど、彼を助けられるのもあなたしかいないんだから」
「……助ける…?」
 私が?
 彼が何をしようとしているかさえ    正確に知らない私が?
 カヤノの眼差しに哀しげなものが滲んで揺れた。
「アシュラルは、何か大きなものに立ち向かおうとしている……。私には誰も教えてくれないけれど、きっとそう。誰かの助けがないと、多分、アシュラルは壊れてしまう」
「………」
「彼はね、本当はとてももろい人なの。あんなに繊細で優しい人が殺戮に手を染めている。きっと……心の中では、とても、苦しんでいるはずだわ」
 ――カヤノは……。
 あさとはようやく顔を上げて、女の大きな目を見つめた。
 カヤノは、ラッセルのことも、アシュラルのことも本当に好きなのだろう。同じカタリナ修道院で育った者として、本心から心配しているのだろう。
 そう思ったら、何を言われても憎めないし、腹も立たないような気がした。
 むしろ、さっぱりと割り切って、憎まれ口を言ってくれるカヤノが愛しく思える。
 なによりカヤノは、ラッセルの妹だった。たとえ血は繋がっていなくとも、ラッセルが……とても愛しそうに語っていた、妹だった……。
 あさとは苦笑した。
「なによ」
 たちまちカヤノがむっとする。
「…なんだか……仲良くなれそうな気がしない? 私たち」
「えっ、な、なに? どうして今の流れでそう思えるわけ?」
 思わぬ狼狽の仕様も、あさとにはなんだか、可愛らしく思える。
 カヤノは虚勢でも張るように、再び腰に腕をあてた。
「あのね、最初にも言ったけど、私はあなたが大嫌いなの。わかってる?」
「うん。でも私は、そんなに嫌いじゃないかも、カヤノのこと」
「…………」
 眉を寄せ、カヤノはまじまじとあさとを見つめた。
「本当、……むかつくわね。あなたって」
 肩をそびやかした女はさらに何か言いかけたものの、そのまま気まずそうに口を閉じた。ちら、と振り返り、上目遣いにあさとを見遣る。
「ま、ジュールにも色々頼まれてるし、……あの時は私も……言い過ぎちゃったし、世間話の相手くらいはしてあげるわよ」
 あさとは思わず失笑した。
「ちょっと、何がおかしいのよ」
「ううん、ごめん」
 前言撤回。私、かなり好きかも、この子。
「で、何からはじめるの? 仕事の話なら、とっとと済ませてしまいましょうよ」
 笑われたのが照れくさかったのか、カヤノはぷりぷりした口調で言った。
 
 
              
 
 
 いったん仕事に取り掛かると、毎日はとても忙しかった。
 空いた時間は、できるだけ剣術の稽古に当てることにした。以前は父の目が気になって、決して出来なかったことだ。
 その相手は、大抵ジュールが勤めてくれたが、時折ロイドも顔を見せ、稽古の相手になってくれた。予想していたが、ロイドは剣の腕も相当なものだった。どうしてドロップアウトして医術の道を選んだのか、理解に苦しむほどに。
 その間、ルナには、カヤノから徹底的に礼儀作法を叩き込ませた。
 カヤノは    話せば話すほど、気性のさっぱりした判りやすい性格をしていた。
 そんなカヤノに、ルナはすぐに心を開いた。カヤノもまた、実の妹のようにルナを可愛がる。頑なだった少女は徐々に殻を脱ぎ捨てて、今ではあさとのことも、カヤノ同様、慕ってくれるようになっていた。
 まるで姉妹のように美しい二人が、手を取り合うようにして笑っている姿を見ると、あさとの心も不思議な幸福に満たされた。
 午後は、皇立療養院の建て直しについての詳細を練る。ロイド、そしてカヤノ、時にジュールを交え、話は尽きなかった。
 何にしても、問題は費用だった。確かにジュールやロイドが危惧した通り、この戦時下、貴族院の許可がそう簡単に下りるとは思えない。色々思索してみたものの、根回しや買収、そんな馬鹿げた手段を駆使したとしても、許可を待つ内に数年が過ぎてしまうだろう。
「私の化粧領と、お手元金をあてましょう」
 思案の末にあさとは言った。化粧領とは、衣装代のために用意された領地のことだ。
 それだけでも、相当の資産になる。
「クシュリナ様……」
 溜息をついたのはジュールだった。
「あなたには、公式の行事が山のように控えていらっしゃるのですよ。そんなことでは、またアシュラル様に恥をかかせることになります」
「あら、だったら法王様に買ってもらうわ」
 ジュールの心配する理由がまたもやアシュラルだったことが可笑しくて、あさとは笑った。
「私は平気、ドレスなんて、何着たって同じなんだから」
 すると、ロイドが大声で笑い出した。
「面白いな、だったら俺がアシュラルに頼んでやろう。奥さんにドレスの一つでもプレゼントしてやれって」
「ロイド、冗談だから」
 さすがに慌てて否定した。ロイドなら、本当にアシュラルに言いかねない。
     アシュラル……。
 再び奥州に赴いたアシュラルの噂は、オルドのあさとの耳にも入ってきていた。
 反乱を起こした小領主を殲滅し、逃走した一族を山に追い込み、森林もろとも焼き払ったという。    あれは、悪魔だ。忌獣の化身だ。そう囁く者さえいた。
 そして実際、法王軍が制圧した土地には忌獣の被害が増加しているという。
     あなたは……一体、何をしようとしているの……?
 耳に届く残虐ぶりは、あさとの心を苦しめた。自分の知るあの男と、耳に入る噂のイメージが一致しない。
 そして、寂しくなる。
 しょせん自分は、彼のことなど何も知らなかったのだと   
 
 
 そして、夜、あさとは必ず白蘭オルドに赴いた。
「お父様……」
 あさとは、父の病床にかしずき、その乾いた肌を、そっと柔布で拭いてやった。
「お父様、私、今、毎日がとても充実しているの。頑張るわ、私なりのやり方で……きっと、ラッセルもダーラも、喜んでくれているはずだから……」
 もし、あの二人が、傍にいてくれたなら。
 どれだけ心強いだろう。あさとは滲む涙を指で払った。
 
 
                  
 
 
「お姉様」
 その声を聞いたのは、本当に久しぶりだった。
 乳白色の朝靄が漂う青百合庭園。あさとは騎士が使う稽古着を身につけ、オルドの外れに設けられた稽古場へ向う途中だった。
「サランナ」
 あさとは立ち止まり、渡り廊下を陣取る華麗な一団に眼をやった。
 念入りに化粧をしたサランナが、その中央に立っている。朝露を浴びてしっとりと輝く妹は、眩しいほどに美しかった。
 彼女の背後には、何人もの侍従と女官が取り澄ました顔で控えている。
 サランナは金色の扇で口元を隠しながら、からかうように眉をひそめた。
「本当にお姉様? 驚いた、どうなさったの、そんな」
 そこまで言い差し、サランナは言葉を途切らせた。扇を下ろし、くすっと笑う。
「殿方がお召しになるものと、同じような衣装を着ておられるのね。私にはとても真似できないわ」
「……法王様の出迎え?」
 あさとは静かに、上段に立つ妹を見上げた。
 サランナの柳眉がわずかに上がる。
「驚いた、ご存知だったの」
 カヤノは予想以上に頭がよく、確かに「使える女」だった。諜報能力に長けているのか、社交界の噂から、宮中行事の予定まで、すぐに情報を手に入れてくる。
 アシュラルが今日一日だけ金波宮に戻ってくる。そして、早朝にはまた、奥州に向けて出発する   
 カヤノがその情報を仕入れてきたのは、昨夜のことだった。
 サランナが故意に伏せているのだと、すぐに察しがついたものの、あえて妹と争うような形で出迎えの挨拶に赴くことはない。あさとはそう判断し、静観することに決めていた。
 朝から着飾って行進しているサランナは    おそらくその足で、アシュラルを出迎えに行くつもりなのだろう。
    馬鹿ねぇ、どうしてそんなに逃げ腰なのよ)
 昨夜、カヤノはかなり怒っていたけれど。   
 そのカヤノの女心について言えば、あさとは時々分からなくなる。
 彼女は、死んだラッセルのことも、アシュラルのことも、同じように好きだと公然と語る。
 けれど、そのくせ執着はしていない。むしろ本気で、あさととアシュラルの仲を取り持つ気でいるらしい。彼女の恋心に関してだけは、ガラスのような瞳同様、その本音が見えてこない。
 そして、ユーリのこともある。
 元青洲公、鷹宮グレシャムを殺したのは、いったい誰だったのか。あの夜、カヤノを襲ったのはいったい何者だったのか。
 この一件には、間違いなくジュールやアシュラルが絡んでいる。グレシャム自身が悪党だったのは間違いないから、今さら、二人に不審を募らせるつもりはなかったが、彼らの<理由>をどうしても知りたい。
 カヤノに聞くにしても、ジュールに問い質すにしても、もう少し    聞く時期を待つつもりだった。
「……お姉様に、お知らせしなかったのは悪かったと思っているわ」
 サランナは、少し寂しそうに長い睫を伏せた。
 ここで寂しそうな顔が出来るのが、妹の利口でしたたかなところだ、とあさとは思った。何も知らない者が見れば、まるであさとがサランナを責めているようにも見えるだろう。
「ごめんなさいね、だってアシュラル、……お姉様がいらっしゃると機嫌が悪くなるんですもの。私はお姉さまにもお知らせした方がいいと言ったのだけど」
「……そう」
 気持ちを    冷静に保とう、あさとは自分に言い聞かせた。
「最近、何か色々やっていらっしゃるみたいですけれど」
 サランナは優しい笑みを浮かべたままあさとを見た。けれど表情とは裏腹に、その声はぞっとするほど冷ややかだった。
「余計なことはなさらないでね。どうか一日でも早く、元気な赤ちゃんをお産みになって」
 そう言って、妹は、鮮やかにドレスの裾を翻した。
 
 
 
 
 
 
 

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