7
聞いたことのある声だった。
でも、よく知っているその人の声とは、どこか違う。
妙に艶めいて、まるで 夜に向かって囁くような甘い音色。
「馬鹿馬鹿しい、どちらもまだ、乳臭い子供だ」
けれど、そう答えた男の声には、まぎれもなく聞き覚えがあった。
クシュリナは目を見張った。
迷路のようになっている庭園の木陰に、一組の男女の姿があった。
おそらく彼らの方からは、こちらは、ロトンダの柱が邪魔になって見えないのだろう。
「クシュリナ様」
ラッセルが囁いて手を伸ばす。ここにいてはいけないと、暗に目が言っている。クシュリナはその手を無視した。
男の声は、アシュラルだった。
「あら、でも女皇様は、どうやら妹君とあなたを結婚させたいみたいだけど」
女は。
……ヴェルツ、公爵夫人。
クシュリナは呟いた。
薄闇の中で寄りそう二人は、どう見ても親密以上の間柄に見えた。
公爵夫人、エレオノラは、花飾りをつけた髪をアシュラルの肩に寄せ、アシュラルは腕を彼女の腰にまわし、殆ど顔と顔を近づけるようにして見つめ合っている。
確かにエレオノラは美しい でも、ダンロビンという息子までいるのに。
アシュラルは、そのダンロビンと、いくつも年が違わないのに。
眩暈がした。よろめいた肩をラッセルが支えた。
彼もまた、この場をどうすべきか逡巡しているように見えた。
今、下手に動けば、ここにクシュリナがいることが、アシュラルにも判ってしまうからだ。
「俺には、どっちでもかまわない」
アシュラルの声 なげやりな声だった。
「せいぜい、姉妹で皇位を争えばいい、俺は決められた相手と結婚するだけですから」
「あなたって、本当に冷たいひと」
「それで、財産も、名誉も転がり込んでくる、結婚相手は人形のようなお嬢様」
そう言って、アシュラルは薄く笑った。
「まだ、姉の方がマシかもしれない、なんでも言うことを聞く、従順な人形そのものだから」
クシュリナは自分の心臓が、冷たく凍り付いていくのを感じた。
が、本当の衝撃は、その後だった。
「あれは可笑しかったわね、あの腰抜けのダンロビンに、いいようにされていたんだもの」
エレオノラはくすくすと笑って、アシュラルの頬に唇を寄せた。
今、なんて、言った……?
クシュリナは無言で、傍らのラッセルの腕を掴んだ。強く、掴んだ。
「従順なのも、あそこまでいくと、滑稽を通り越して哀れだな」
アシュラルの声。
「いいところだったのに、どうしてあなた、あそこで邪魔に入ったの」
いたんだ。
「いくらなんでも、少女趣味は肌に合わない、こっちの気分が悪くなった」
「そんなこと言って、本当は、お姫様を助けたかっんじゃない?」
アシュラルは黙って肩をすくめた。
「ダンロビンが気づかなかったからいいようなものを、私たちがあそこにいたって判ったら、ただじゃすまなかったわよ」
いたんだ、アシュラルは、最初から。
乱れた髪、はだけた胸元、では あれは。
エレオノラは身体の向きを変え、アシュラルの細く締まった胴を両腕で抱いた。
「あなたって、まだ子供、なのに身体は、いっぱしの大人ね」
「あなたが、教えてくれた」
「冗談はよして、随分慣れていらっしゃったわ」
「どんな風に?」
「もう……」
囁きあう、二つの唇が寄せられる。
限界だった。
クシュリナは踵を返した。
もう、何も聞きたくはなかった。そして何も、見たくなかった。
8
「お待ち下さい」
「離してっ」
掴まれた腕を、クシュリナは力いっぱい振り払った。
胸が苦しい、こんなに思いっきり走ったのは、生まれて初めてだ。
ラッセルは、さすがに呼吸を乱してはいないが、額にうっすらと汗を滲ませている。運動のため、というよりは焦燥のためだろう。
「この先は……姫様がお行きになってよい場所ではございません」
広い庭園の外れ。辺りは静まり返り、もう、本殿の灯りさえ届かない。
目の前には巨大な城壁。クシュリナもよく知っている。この壁の向こうは、紅薔薇宮殿――義母アデラの居城があるのだ。
緋薔薇には緋薔薇近衛隊が、黄薔薇には黄薔薇近衛隊がそれぞれいて、主のオルドを護っている。彼らにしてみれば、第一皇女であってもクシュリナは 敵なのだ。
「戻って、どうするの?」
意味がない質問だと知りつつ、クシュリナは口にしていた。
「戻って何になるの? 何をすればいいの?」
月明かりだけが、二人を白々と照らし出している。
主の激情が収まるのを待つつもりなのか、ラッセルは無言のままだった。表情を変えることもなく、ただ静かな眼差しでクシュリナを見つめている。
それが、いっそうクシュリナを苛立たせた。
「あの人が大嫌い、こんなに人を嫌いになったのは初めてです!」
アシュラル。 。
「あの人と結婚するくらいなら、まだダンロビンの方がましだわ」
言葉にして、その惨めさが、ますますクシュリナを打ちのめした。ダンロビンなどを引き合いにだしたことが、いっそう自身を憐れなものに感じさせる。
唇を噛んで、こみあげそうな激情に耐える。何があっても、人前で泣いたりなんかしない。 しかも、ラッセルのような、お父様の僕の前では絶対。
沈黙の後、ラッセルの静かな声がした。
「さきほどの、アシュラル様のことですが」
「………」
「差し出がましいことを申し上げるようですが」
月光が、彼の横顔を静かに照らし出している。
似ている……。
彼の横顔を見上げたクシュリナは、そっと眉をしかめていた。
こうして薄闇の中で見ると、ラッセルは本当に アシュラルとよく似ている。
双方から受ける印象は、天地ほど違うというのに。
「私は、アシュラル様をよく存じ上げております。先ほどの会話はどうあれ、人間的に、非常に尊敬できるお方だと思っております」
「………」
唖然としながら、クシュリナは、黙って視線だけを下げていた。
この人は何を言っているんだろう。
この人だって、先ほどのアシュラルの言葉を聞いたはずなのに。
あの態度のどこが、どうやったら尊敬できるというのだろうか。
「何か、……きっと、ご事情がおありなのです」
苦しい言い訳に、いっそ笑いたくさえなっている。
そこまでして、父も、この人も、私とアシュラルを結婚させたいと思っているのだろうか。 。
「どうか、ご婚礼の日まで、あの方を信じてお待ちいただければと思います」
「結婚はします。お父様のいいつけですもの」
何故だろう。
こんなに苛立ちが収まらないのは初めてだ。
「でも、私は、彼がどうしても好きになれません。いえ、一生好きになれません。お父様もあなたも、私にそんな不幸な結婚をお望みなのね?」
目の前の人に、そんな感情をぶつけてもなんの意味もないことは判っている。でも、堰を切った言葉だけが止まらない。
「あなたもお父様も、本当の意味で、私のことなど何も案じてはいないんだわ。お父様は、いつだって亡くなられたお母様が大切なのよ。私の……私のことなんて」
はっと込み上げるものがあり、クシュリナは口を両手で覆っていた。
暗く翳る、ラッセルの表情は判らない。
「私は……お母様の、代わりなのよ」
心臓が悪かった母は、出産に耐えられずに産後間もなく息を引き取った。
物心ついてその事実知ったクシュリナは、父から母を奪ったのが自分であることをはっきりと理解したのだった。
父の自分を見る目に、愛しさと憎しみと悲しみが複雑に混じり合っていることを、子供の頃から、クシュリナは誰よりもよく知っている。
周囲からは溺愛と呼ばれる父の愛が、どこか歪んで、時に氷のような冷たさをはらんでいることも。
だからこそ、そんな寂しい父を、これ以上悲しませてはいけないことも。
「だから、私は、お母様のようにならなくちゃいけないのよ。優しくて、たおやかで、何があっても人前で感情を見せず、笑っていられるような……完ぺきな……」
それを人形だとあざけられた。意思のない人形だと。 。
「っ……」
不意にさすような胸の痛みを感じ、そのままクシュリナはしゃがみこんでいた。
「姫様?」
胸をかきむしられるような痛みが、しだいに息苦しさに変わっていく。
それが、たまに起こる発作の兆候だということは、すぐに判った。同時に、人前では決して見せてはならない見苦しい姿だということも。
いつも、庇うように助けてくれる女官たちは傍にいない。わずかな時間で収まることもある呼吸の発作。が、いつにない胸の痛みは、今回の発作が常より激しいことを予感させる。
どうしよう。
苦しい、息が、息ができない……。
「どうなさいました?」
「なん、でも……」
苦しさから顔をあげるのと、ラッセルの腕が肩を抱くのが一緒だった。
「ラッ……」
抱き寄せられる。
ただ苦しさのままに、クシュリナはラッセルの背にしがみついた。
「……たす、けて」
息が、できない。
忙しない息だけが、閉じることが出来ない唇から零れ続ける。どんなに苦しくても吸うことが出来ない。苦悶で顔が歪み、頭の中が、白くなっていく。
「しっかりなさいませ」
ラッセルはクシュリナを片腕で抱き支えると、腰回りを締めていた飾り紐を解き、胸元のボタンを外した。 途端に、少しだけ、呼吸が楽になる。
「落ち着いて……ゆっくり、息を吸って」
柔らかく抱きしめられ、背中を何度も撫でられる。
温かい……。
不思議な安らぎが胸を満たし、ようやく、わずかだが空気が胸に流れ込んでくる。
「そう、ゆっくりと、息を、吸って」
クシュリナはうなずき、彼の言う通りにした。
いつもは、寝台に横臥させられて、女官たちが背を撫でてくれた。ラッセルの手は、その優しい感触と同じだった。
いや いつもより、格段に早く楽になるのは、何故なのだろうか。
発作が起きている間、不安で怖くてどうしようもないのに、今、こんなにも安心していられるのは。 。
「ご無礼を、お許し下さい」
やがて、身体を起したクシュリナの衣装を元通りに整えながら、ラッセルは言った。
「おそらく、呼吸の回数が一時的に増える病ではないかと思います。私の妹が、同じような症状でございましたから」
優しい声だった。
その口調に、彼が傍につくようになって初めて、最初の温かな印象を感じたような気がして、クシュリナはラッセルを見上げている。
「衣服を緩め、身体を温めれば、すぐに症状は落ち着きます。気持ちの焦りからくる病だと、村の術師は申しておりましたが、一度御殿医に診てもらった方がよろしいでしょう」
だから、手馴れていたのだ。
いたわるような優しい指の動きを見つめながら、クシュリナは視界が滲むのを感じた。
それまで、ずっと自分を繋ぎとめていた何かが、音を立てて切れたような気がした。
「ラッセル、お願い……」
ラッセルが、不思議そうな眼差しを上げる。
「もう、……オルドには戻りたくない」
「………」
「……私を、どこか遠くに連れていって」
言ってから、初めてそれが、自分でも気付かなかった、本心の叫びなのだと気がついた。
視界が、みるみるぼやけて滲んでいく。
私……女皇なんかになりたくない。
自由になりたい……、この牢獄のような城をでて、どこか、遠くで。 。
溢れた涙が、頬に零れるのが判った。
それは、決して叶うことのない、望むことさえ許されない我儘だった。定められた運命からは逃げられない。イヌルダの第一皇女として生まれた以上、義母に憎まれ、義妹と争いながらも、この棘の道を歩んでいくしかないのだ。 。
顔を両手で抑え、うずくまったまま、クシュリナは嗚咽を繰り返した。
ラッセルは黙っている。
しゃくりあげるクシュリナの目には、彼の胸元だけが見えている。顔を見るだけの勇気はなかった。困惑か失望か、そのいずれかを見るだけになるだろうから。
そのまま どれだけ、時間が過ぎただろう。
ようやく涙も枯れ、嵐にも似た激情も静まってくる。
「……参りましょうか」
静かな声が、クシュリナを現実に引き戻した。
「ええ」
クシュリナは、手のひらで涙をぬぐって立ち上がった。泣いた後の顔を見られたなくて、あえてラッセルに背を向けた。
戻らなくてはならない。なんでもないような顔をして 結局は、そうするしかないのだ。
そして、自嘲気味に思っている。アシュラルの言うとおり、確かに自分は何もできない人形なのかもしれない。自身を取り巻く沢山の殻を、おそらく 今夜のように嘆きながら それでも、生涯破ることが出来ないのだから。
「この時間なら、夜陰に紛れて宮を抜けることもできましょう。どちらへ参りましょうか」
え?
クシュリナの返事を待たず、ラッセルは先に立って歩き出した。広間とは、別の方角へ。
「ひとまず、行き先は私に任せていただけますか。無事に皇都の外に出るまでは」
「ま……」
今度はクシュリナが慌てて後を追う番だった。
「待って、ラッセル、そんなの無茶だわ」
ようやく追いつき、彼の腕を取る。
「確かに難しいでしょうが、不可能ではありません」
「そんなことじゃなくて」
まだ歩みを止めないラッセルの腕を、クシュリナは両手で掴んで止めた。
「そんなことをしたら、あなたが、どんな目にあうかわからないのよ」
「………」
ラッセルは振り向かなかった。
「私は、申し上げたはずです」
柔らかな髪が風に揺れていた。引き締まった顎と、きれいな鼻すじだけが見えた。
「生涯背かず、身命に変えても、あなた様をお守りすると」
「………」
「それが、あなた様の心より発せられたご命令であれば、私は何処へなりと、参りましょう」
身命に変えても……。
クシュリナは、彼の言葉の意味を胸の中で噛み締めた。
この人は。
この人は、今、私のために死んでもいいと、そう言ってくれているのだ。
「クシュリナ様」
ラッセルはゆっくりと振り向いた。
きれいな目、優しげな口元。
初めて、クシュリナは自分の胸が不思議な動悸を打つのを感じた。
「例えあなた様が、この先どのような運命を辿ろうとも、私だけは変わらず、あなた様にお仕えいたします。これだけが」
「………」
「私が姫様に差し上げることのできる、唯一の真実でございます」
「本当に……?」
クシュリナは呟いた。
「本当に」
ラッセルは、わずかな微笑を浮かべて頷いた。
「一生よ、私が、死ぬまで」
「私が、先に死ぬことにならなければ」
その言葉だけで、空っぽだった心が、ゆっくりと満たされていくようだった。
ラッセル……。
眼を閉じたクシュリナは、もう一度溢れた涙を両手で払い、それでも零れた涙を拭い、ラッセルを見上げた。
「約束して、……」
「なんなりと」
優しい眼が見下ろしている。
「いつか、……すごく、すごく先のことだけど、いつか私が金羽宮を出て、どこか遠くに行きたいと思った時……本当に思った時、私がそう願った時は、絶対に……私を連れて行ってくれる?」
「それが、いつであろうと、必ず」
初めてクシュリナは心から笑んで、ラッセルを見つめた。
これで、何が起ころうとも、私は耐えていけるだろう。
例えこの先、何が 起ころうとも。
この人が、私の傍にいてくれる限り。
9
聖将院アシュラルに対し、突然「騎士の旅」に出ることが命じられたのは、それから半月後のことだった。
ヴェルツ公爵夫人との密会が公爵の知るところになったのだという噂は、あっという間に金羽宮に広まり、さしもの法王も引くしかない弱みを掴まれたのだと、 種々の噂がもっともらしく囁かれた。
クシュリナに本当の理由までは判らない。が、この件に関して、ヴェルツから大きな圧力が そして、五公の中で大きなかけひき 政治的な様々な軋轢が、ハシェミと、そしてコンスタンティノ家にかかったのだけは、確かな事実のようだった。
別れの前夜、アシュラルは、形どおりの挨拶に訪れたが、クシュリナは病を理由に顔を出さなかった。
そしてそのまま 婚約者は身ひとつで出奔した。
これからは自分の剣技だけで、各地の武道会に参加し、賞金を糧に生きていかねばならない。上流貴族に課せられた罰としては、かなり屈辱的なものである。
最低、一年か、二年。
それが、ヴェルツの提示した条件のようだった。要するに体のいい国外追放処分である。
クシュリナには、何の感慨もなかった。
実際は法王からかなりの支援があるのだろうし、アシュラルのことだ、何処へ行っても、上手くやってゆけるだろう。
が、その奇禍は結局、思いも寄らない形でクシュリナにも及ぶこととなる。
アシュラルが去った後、ヴェルツ公爵は、頻繁にクシュリナを自邸へ招くようになった。
断り続けることはできなかった。その頃にはクシュリナにも、ハシェミとヴェルツの力関係が見えてくるようになっていたから。
ヴェルツ邸では、様々な危険や屈辱的な出来事がクシュリナを見舞ったし、父の力をあてにできない難題にも何度かぶつかった。が、もう、クシュリナは、以前のようにダンロビンの顔を見るだけで恐ろしいと思うことはなくなっていた。
クシュリナの傍には、常にラッセルが付き添っていたからだ。
どんな時も、どこにいても、ラッセルは必ず、その力強い腕と冷静な判断力で持って、クシュリナを窮地から救いあげてくれた。
いつも影となり、時に前に出て庇い、何があっても傍にいてくれた。
だから、もう 何も怖くはなかった。
いつしかクシュリナは、まっすぐな眼差しで、ダンロビンを見られるようになっていた。
それでも、もうこれ以上、ヴェルツ侯爵とダンロビンの絡め手から逃れることが難しい状況になった時。 。
ハシェミは遊学という名目で、クシュリナを青州鷹宮家に預けることに決めたのだ。当時、鷹宮家の当主は、亡くなった先代の青州公で、ハシェミには最も信頼できる五公の一人だったからだろう。
クシュリナはラッセルと共に青州に渡った。
そこで鷹宮ユーリに出会い、ようやく身分を離れた生涯の友を得た。
それから、三年。
十五歳になったクシュリナは、ハシェミの命を受けてイヌルダに戻った。
皇都の状況は、三年前と大きく変わってしまっていた。
結婚まで青州で過ごすはずだったクシュリナが、予定より二年も早くイヌルダに戻された理由は二つある。
ひとつは青州公の病が芳しくなく、死期が近かったこと。
そして皇都にあっては、ヴェルツ公爵の変心である。
ヴェルツは、すでに、ハシェミを見限り、女皇アデラと結託を強めていた。ダンロビンの妻にはクシュリナではなく、第二皇女のサランナをと望むようになっていた。
ヴェルツがクシュリナを得る目的を失った以上、クシュリナが国を離れる必要もなくなったのである。
約束の期限はとうに過ぎていた。それでも、アシュラルは戻っては来なかった。
アシュラルは逃げたのだ。
誰もが、そう囁いた。
皇室は、おそらくサランナとダンロビンのものになる。アシュラルが戻れば、間違いなく戦争だ。だから アシュラルは逃げたのだと。
さらに、二年が過ぎた。
もう、あの美しい青年は、二度と戻ってこないだろうと、誰もが内心思うようになっていた。
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