第三部






「そんなにあなたは、悔いているのですか」





「……辛いんです、思い出すと、眠れないほどです」
「何がそんなに辛いのです、不幸な事故に、子供だったあなたが、どうしてそれほど責任を感じるのです」
「……あなたには判らない……でも、あれは俺のせいなんです、俺が殺したも同然なんです……」
「…………」
「誰もが、俺を慰めます、事故だったと、仕方のないことだったと、……決して責めたりはしないんです。でも、内心で思っているような気がします、どうして……助けられなかったのだと」
「…………」
「今でも、どうしても思い出せないんです、何故、身体が動かなかったのか、何故俺は――あの人を置いて、一人で海面に顔を出してしまったのか」
「思い出せないのですか?思い出したくないのではなく?」
「…………」
「御守さん」
 正面に座る男の顔が、ゆっくりと上がる。
 黒目勝ちの澄み切った瞳。一欠片の邪念もためらいもない眼差し。


「あなたが……お姉さんを殺したと、そう思う本当の理由を教えてあげましょうか」

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