聞こえる、恋の唄
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第20章
「繋がる想い」
………<2>………

この人は……。

自分の視力と引き換えにしてまでも、私を求めてくれたのだ……。

視界が滲み、もう何も言えなかった。

志野は全身の力を抜き、ただ求められるものに、抗わずに応じた。

「俺を見ろ」

それでも、志野は目を逸らしていた。

「目を逸らさずに俺を見ろ」

「…………」

「俺は汚れた人間か、お前とは別の世界にいる人間か」

「…………」

「見ろ、志野」

ようやく、おずおずと、志野は頑なに閉じていた瞳を開けた。

逆光で、輪郭が明確に照らし出された美しい身体。

けれど、それがどんなに汚れて醜かったとしても、志野にはやはり、美しく見えていたはずだった。

志野が愛しているのは雅流の外見でも肉体でもない、雅流という人、そのものだから――。

ようやく、雅流が言いたかったことが、雨が胸に沁みるように判りはじめていた。

視野が潤み、志野は両手で口を覆った。

「俺はなんだ」

雅流が問った。

「雅流……様でございます」

志野の額に雅流の指が触れ、乱れた髪をそっと払った。

「お前を好きなだけの男だ」

「…………」

「俺たちは何も変らない、同じなんだ……昔から」

――雅流様……。

涙が溢れ、頬を伝った。

抱き合う素肌から、同じ匂いと同じ鼓動の音がした。

心の楔がゆるやかに解け、ただ、目の前の人を好きだという気持ちだけが全てになる。

「俺と一緒に生きてくれるか」

大きな暖かさに包まれたまま、志野は小さく頷いた。

そして、ようやく心から安堵して、愛する人の身体を抱きしめた。


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