■■■■■■■■ 聞こえる、恋の唄 ■■■■■■■■ 第20章 「繋がる想い」 |
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志野は、眼を閉じていた。 彼の吐息と鼓動を全身で感じながら、息苦しいほどの心地よさと、死にたいほどの罪深さを同時に感じ続けていた。 私は、この人より四つも年が上で。 未来あるこの人に比べ、私には何もなくて。 家柄も、容姿も、彼には少しもふさわしくないのに。 「志野……」 半身を起こした雅流が、動きをとめて見下ろしている。 「私を見ないでください」 志野は顔を覆っていた。 眩しい明りで、男の顔が逆光になっている。 自分には見えない、なのに雅流の目には、肌の陰りの細部まで、ありありと見えているに違いない。 「お願いです、私を見ないで」 「お前はきれいだよ」 志野は首を振ったが、顔を覆う両手は、掴まれて引き離されていた。 「全部きれいだ。お前はいやでも、俺はもっと見ていたい」 ああ、そうだ。 志野は、胸を衝かれるような思いで口をつぐんだ。 雅流は――もう何年もの間、光の射さない世界で生きてきたのだ。 その彼に見ないでというのは、なんと思いやりのない言葉だったろうか。 背を抱かれ、引き起こされる。 互いの脱いだ着物の上で、雅流は志野を抱き締めて、再会して初めて二人は接吻を交わした。 「志野……」 抱かれている肩が、背中が痛い。 息ができない。 せき止められていた激流が溢れ出すような、失った時間を埋めてあまりあるような――激しい、身体ごと溶けてしまいそうな口づけが続く。 唇をわずかに離し、耐えかねたように雅流は呟いた。 「もう、何処へもやらない」 「雅流様」 「何処へもいくな、これからはずっと俺の傍にいてくれ」 |
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