「怪物とお姫様」 中編 恋愛・現代 |
時々、気のせいかもしれないけど――。 片方しかない朋哉の目に、暗い情熱を感じる時がある。 何か、もの言いたいような、何かを伝えたいような。 でもそれはいつも、凛世が手を伸ばした途端、ふっと何事もなかったように消えてしまう。 「おやすみなさいませ」 口元に影のある微笑を浮かべ、朋哉は丁寧に頭を下げた。 「本のことは、ご自由になさいませ、あれはもう、凛世様のものでございます」 それはすでに、取り付くしまさえない、忠実な執事の声だった。 >>読んでみる(別窓) |
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「冬の人魚姫」 中編 現代・社会人 |
私、自分で服を脱いでもいいのかな、この人に脱がされるのを待たないといけないのかな。 御守は何も言わない。ネクタイを外す指。関節は無骨なのに、バランスの取れた長さが意外なほど綺麗に見える。 「来い」 ようやくこちらを向いてくれた男の手が、ゆっくりと伸ばされる。その手には、外したばかりのネクタイが絡んでいる。 有紀は、棒のように立ちすくんだまま、指に絡まるネクタイだけを見続けていた。動けなかった。 >>読んでみる |
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イラスト にしゆきさま 「白鳥の王子」 短編 中世恋愛ファンタジー |
「お兄様……」 か細い声を聞きとがめ、兄の笑顔がわずかに曇る。 「……どうした、リージア。ひどく悲しそうな顔をして」 優しい声、きれいな眼差しと穏やかな笑顔。 妹は――苦しい切なさを秘めて、近寄ってくる兄を見上げる。 六つ年上の兄、フィエルテ。 絹のような黒髪に、深海の瞳を持つ男。 月の娘リージア姫と、太陽の息子フェエルテ王子。 このダイノアス国で誰からも愛される二人の兄妹は、手の平を合わせて、見つめあう。 >>読んでみる |
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